ピーナ物語「センチメンタルな思い」


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「ソイ、また会いに来てね。」

私の胸の中でそう言った彼女を
抱きしめながら

「うん、また来るね。」

私は何を思ったのか
思わずそう答えてしまったのです。

つい先程までは、もう2度目は
無いな、そう思い席を立ったのに
何故、自分がそんな事を言ったのか
不思議でした。

ただ、彼女が「ソイ、ハグして。」
そう言って私に見せた
何とも愛くるしい笑顔に
私の気持ちが突然
変わったのだと思います。

夜嬢達が取る態度や言葉が
営業かそうでないか
線引きは本当に難しいと
思います。

自分に一定の感情を持ってくれて
いると思えば、こちらのとんだ
見当違いであったりする事も
よくある事です。

しかし、この事もある程度の
場数を踏んでいけば何となく
分かってくるのでは
ないでしょうか?

これは営業だな、いやこれは
一定の感情を自分に持っているな
そんな事が段々と見極められる
ようになれると思います。

私はこの時、彼女の行為が
営業での行為では無かった
ように思えました。

なので、私も思わず自分の口から
また来るねと返事したのです。

彼女が立ち上がり、私を扉まで
見送りしてくれました。
扉が開いて手を振り「またね。」
そう言って私は店を出ました。

店に来るのはこれっきりだな
そう思っていた私の心の中に
突然現れた雲のように
ピーナの存在が大きく
広がっていったのです

ホテルに向かう私の回りには
コロナ禍の元、ネオンや
赤提灯を灯した店が
並んでいるだけで
とても静かな夜でした。

ホテルに向かいながら
そんなネオンや赤提灯を
流し見しながら、私は
思ったのです。

私1人など、とても小さな
存在ですが、そんな小さな
存在の私が、1人のレディを
幸せそうな笑顔に出来たなら

私はまた、彼女の店に通う
意義が十分にあるのではないか
そう思えたのです。

正直、ゴーゴーには自分の欲望の
はけ口を求めて通っていました。

ただこの夜は、私はピーナの
笑顔を見て、自分の欲望の
はけ口として彼女に
接するのではなく

これから彼女に沢山の笑顔を
プレゼントしてあげよう。
そう思ったのです。

まだ、夏の暑さが
収まりきらない
私は1人ホテルに向かいながら
彼女を少しだけでも
幸せにしてあげよう。

柄にも無く、そんな
センチメンタルな思いに
駆られてしまいました。

「ソイ!また来てね。」

その言葉と共に、再び
彼女の温もりが思い出され
彼女の笑顔が浮かんできました。

細い腕、細い肩、小さな胸
抱きしめてあげた彼女は
今にも壊れそうな
小鹿のようでした。

「負けたよ、ピーナ。」

「俺の負けだよ・・・。」

私はそう思い、何故かとても
幸せな気持ちで、ホテルの扉を
くぐったのです・・・。

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