ソムタム投稿「気分転換でクラビに行こうか」

●ソムタム投稿第228話 

「気分転換でクラビに行こうか」


体調が良くないところに加えて
まわりでHIVに感染するレディが
出てきて、ゴーゴーバーの仕事が
嫌になっている嬢。

毎日グチばかり聞いていて、正直
こちらも気が滅入ってきますが
嬢にしてみれば話すことで少しでも
楽になるので、無駄ではありません。

「もうバーで働きたくない」

このところ毎日聞いているセリフです。

「昨夜は6ドリンクだったけど本当に
 毎日怖い」

「客がHIVの子を知らずにペイバー
 したの。そしてその次は、まだ感染
 していないレディが彼と行くんだわ」

「昨日、近くのバーでまた1人検査で
 陽性だった。私の店ではまだ検査に
 引っかかった子はいないけど
 いつそうなるか分からない」

「別の店の友達が、客にノーゴムでされ
 たの。だから検査は月末まで伸ばすって」

この意味がお分かりでしょうか? 

もし検査で陽性になれば、もうこの仕事は
出来ません。だからそれまでの間に稼げる
だけ稼いでおこうという、すさまじい
状況です。

もしその子が感染していたら、さらに
感染者を増やすことになります。

そうやって客とレディの間で感染の
可能性はどんどん増大していきます。

絵にかいたようなHIV感染の最前線です。

「怖い。もう誰も信じられない。
 悪い客がどこかから来る」

「客としなきゃ大丈夫だよ」

「昨夜は新しい客がワタシを呼んだけど
 席にいかなかった」

「ドリンクもらうだけなら大丈夫だって」

「客ばかりじゃないわ。店のレディが
 私の手をひっかいたのよ。傷からうつる
 かもしれないでしょ! もう気が狂い
 そうだわ」

「引っかかれただけで、そう簡単に感染
 することはないよ」

「普通の客のドリンクもいらない。
 金持ちのビッグカスタマーのドリンク
 だけでいい」

「お願い。もう働かなくていいって言って!」

私は嬢の言葉を受け止めるだけで精一杯です。


翌日、ソイさんにこの様子をラインで報告
します。

「ソムタムさん、それ彼女ね、結婚したがって
 るんですよ」

「本気ならパタヤに来てあげることです。
 とことん覚悟しないと」

私が独身ならそうしてもいいのですが
なかなかそうもいきません。

「結婚はともかく、2年たったら退職する
 から、それからならパタヤに長期滞在
 できるようになります」

「2年も待てませんよ。結婚が無理なら
 愛人契約。束縛しない。ソムタムさんが
 パタヤに来てない時は自由にさせる」

「客と何しようが男がいようが文句言わない」

何とも返答できません。嬢だけでなく
私もそれなりに悩んでいます。

毎日嬢のグチを聞くばかりではお互いに
しんどいので、明るい話題も振って
やります。

「今度行くのは夏だけど、パタヤから
 出て二人で出かけようか」

サメット島は行ったので、他のリゾート
を探してみます。

タイの国内線で出かけるのもいいなと
クラビに目をつけます。

スワンナプーム~クラビの航空券を
見たら、TGでも往復8000円ほど。

こんな安いんだと、即決でチケットを
取ります。

さっそく嬢にチケットの画像を送ります。

「今度クラビに行くぞ。おまえ飛行機
 乗ったことないだろう?」

「怖い」

「えー、行きたくないのか?」

「乗り物酔いするし、落ちると死ぬ」

大喜びしてくれると思ったのに、そこか。

「そんなもん、道歩いててもクルマが
 突っ込んで来る。大丈夫だ」

「本当? イェーイ!」

やれやれです。

「チケット高いわね」

「こんなもんだ。日本からのチケットに
 比べたら安いよ」

「ホテルは安いところでいいからね」

そうは言ってもせっかくなので、ちょっと
いいリゾートホテルを取りました。

二人で1泊6000バーツほどでです。

「ワタシのアパートの部屋代よりも高い」

そう言いながらも嬢はうれしそうでした。

「じゃ、今日は仕事行ってくるね」

嬢は元気よく出かけて行きました。

私も楽しみにしていたクラビ旅行ですが
まさかコロナでタイに行くことすら
出来なくなるとは、この時の二人は
想像すらしていませんでした。

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それでも俺はタイへ行く