ソムタム投稿【●第241話 戒厳令前日、ソイさん緊急帰国】
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「Facebook今読みました。
帰国発表ですね」
私は日本やタイのニュースを気に
しながら、ソイさんにラインを
送りました。
「緊急避難です。いよいよパタヤ
にもやってきました。ソイ8や
セカンドロードコンドーで
感染者が出ています。」
「このままパタヤにいたら、当分
帰国も出来なくなってしまいます」
「嬢はソイさんのことも心配して
ますよ。食料買ったのかと」
そのアドバイスをしてくれたのは
ソイさんだということを、忘れて
いるみたいです。
「ソイさんはいったん帰国する
と言っておきますね」
タイでは戒厳令が出る26日以降、
外出禁止となっています。
嬢の弟は、私が送った金を取りに
来いと言ったら
「ビーチで貝を採ってるから
食料は大丈夫だ」
と言っているそうです。
弟はカラオケの仕事が休みなので、
仲間とみんなでワイワイ潮干狩り
しているのでしょう。
仕事も金も無いし国へも帰れ
ないので、仲間で集まって
なんとかやりすごすようです。
「弟の仲間の毎晩の酒盛りとか、
集団感染の元凶ですよね」
ビーチで酒盛りしているなら
まだしも、外出禁止でみんなで
部屋にこもっていると、３密
（密閉・密集・密接）その
ものです。
「若い者はあまり発症しないし、
発症しても病院行かないで拡散。
それが怖い」
「あと、金の尽きたファラン。
帰るに帰れない爺さん達。
これが結構いますからねー」
元々、年寄りは普通のインフル
エンザでもやられる率が高いです。
「咳込みながら散歩、爺さん同士
で酒盛り、果てはコンドーで
孤独死」
「移動を制限されて固定された
感染弱者集団で、どんどん広がる。
パタヤはそれが怖いですね」
「日本みたいに、元々施設に
感染弱者がいるところは、
院内で爆発してもそこで抑え
込める」
「FBでタイのスーパーがパニック
になる予想が出ましたよ」
「皆考えることは同じ。今日が
勝負です。発令後はヤバイ。
マジで朝イチで行かせて下さい！」
「ビッグＣでなく近所へ行けと
言ってあります」
嬢には、緊急用に専用口座の
カードを持たせてあるのですが、
そこから１万バーツ引き出して
買い出しに行けと言ったら、
大喜びでアイスクリームとか
ムーガタとか言います。
「行けるものなら行ってみろ！
そんなの後回しだ」
深刻さが分かっていません。
夜嬢あるあるで、すぐビビる
くせに根本的に脳天気です。
「近所のスーパーに来てるけど、
卵と米が無い。なんにもないわ」
それ見ろ。
とりあえず持てるだけいろいろ
買って帰って、再出撃します。
「米はセブンイレブンにあった」
楽観的なことを言っています。
次に行った時には消えている
かもしれないのに。
「早く早く！ 物資が止まりますよ」
ソイさんからもラインが来ます。
２回目は娘は留守番なので、
アパート１階の水販売機で
買っとけと指示しました
嬢はいつもはネットでペット
ボトルの水を大量に注文して
いますが、
この事態では届かないことも
考えられます。
3000バーツ分食料品やら買物
して、ついでにお昼も買って、
娘と二人部屋で昼飯をたっぷり
食べて幸せそうです。
結局、肝心の米と卵は買えて
いません。家にある在庫だけです。
「店に無かったら屋台で買えば
いいくらいに思ってますよ、
きっと」
「もう屋台も出ません」
嬢は「ワタシはちょっとしか
食べないから大丈夫」と言います。
そういう問題じゃないんだけ
どなあ。
ソイさんはコンドミニアムを
あわただしく引き払って、
パタヤをあとにします。
直行便が取れないので、香港
経由でとにかくタイを脱出です。
しかし香港でトランジットが
クローズ。いったいどうなる
ことやら。
嬢は、日本人だからきっと
帰れるだろうとこれも楽観視です。
「今日はシーツと服買いに行く。
でも食料や雑貨もちゃんと
買ってくるね」
帰ってくると
「アヒルの卵売ってた」
高いから残ってたんでしょう。
「バンコクの姉さんはお金が
ない。ペッチャブーンの
姉さんもお金がない」
嬢はべそをかいていました。
「ソイはもう帰ってこないの？
あなたは日本の人だけど
ソイはもうタイの人。」
「会えないのは寂しい。いつか
帰ってきて欲しい」
ソイさんが日本に帰国できたのは、
３日後の29日のことでした。
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